四竜帝の大陸【青の大陸編】
そんなことを言ったら、貴方を苦しめてしまうのに。

「私、好きなの。貴方が大好き」

貴方を愛してるから、口に出来ないこともある。
知られたくない事も、想いもできてしまった。

「つがいにしてくれて……愛してくれて、ありがとう」

ねぇ、貴方も。
貴方も私に言えない事や、知られたくない事ってあるよね?
それは、私を愛してくれてるからだよね?

「……りこ?」

私はハクちゃんの手から抜いた両手で、ハクちゃんに抱きついた。
しっかりと腕を絡め、真珠色の髪に顔を埋めた。
 
今の。
私の顔、見せたくない。
貴方に、見られたくないの。

「あのね、名前……<弟>の名前を教えてもらったの」

<母様>と<父様>が帰ってきたら。

ケーキを焼こう。
竜帝さんに材料とかの相談をして……。
彼は、ダルフェさんのお菓子作りのお師匠様らしいから。

「……ジリギエっていうんだって」
 
ふわふわのシフォンケーキを焼こう。
お母さんが教えてくれた、お母さんの一番得意だったケーキを。

この世界の<家族>のために。

「ふふっ、楽しみだな~! ハクちゃん、一緒にお祝いのケーキを作ろうよ。ねっ、いいでしょう? 卵をしっかりと泡立てなきゃだから、手伝って欲しいなっ」

ハクちゃんの髪から顔を離し、金の眼に映る自分の顔を確認しながら言った。

大丈夫。
笑えてる。
私は、笑えてる。
 
もっと、もっと。
たくさん笑おう。

私の笑顔が好きだと言ってくれた、貴方のために。

私が死んでも。
私の笑顔が。

愛しい貴方のその眼の中に、残るように。

いっぱい、笑おう。

「楽しそうだな、りこ。りこはケーキを作るのが好きなのか? ……そうして笑っていてくれると、我はとても嬉しい。りこ、我は全力で卵を泡立てるぞ! 必ずや期待に応えて見せようではないか」

私、笑うから。
いっぱい、笑うから。

「うん! うふふっ……頼りにしてるよ、旦那様」
 
ねぇ、ハクちゃん。
約束したよね?


私が死んだら。


全部、食べてね。






< 395 / 807 >

この作品をシェア

pagetop