四竜帝の大陸【青の大陸編】
翌日。

「あれっ? 金魚さんがいないっ、1匹もいない! ……うわわっ、なによこのでっかくてグロテスクな生き物は!?」

日課となった金魚の餌やりをしようとした私が見たものは。
1メートル弱はありそうな、黒くてぬるっとした……鱗の無い丸々と太った生き物だった。

「この帝都周辺で獲れる魚は、これが最も美味だと<青>が言った。りこを驚かせようと深夜にこっそり入れておいたのだ! 嬉しいか? 肉より魚が好きだろう?」

竜体のハクちゃんが、水面ぎりぎりをふわふわ飛びながら得意げに言った。
勉強会のある週4日は、ハクちゃんは夕方まで竜体で過ごしている。
竜体での念話で、私の勉強をサポートしてくれていた。
ハクちゃんって、私にはすごく優しい旦那様なんです。
しか~しっ!
 
「ハクちゃん。こ……これ、鯰だよね? き、金魚さんはどこに……?」

鯰って、小魚を食べ……うそっ、まさか!?

「金魚? さあな、我は知らんぞ。りこは不味い観賞魚より、美味い食用魚の方が喜ぶかと……むむっ?もしかして、鯰は魚ではないのか?」
 
げげっ、やっぱり!
金魚を他へ移してから鯰を入れたんじゃないんだあぁぁ~。

「ち、ちがーう! そうじゃなくて、違うよぉ~! ハクちゃん、なんてことすんのよ!!」

「やはり鯰は魚なのだな。では、何を怒っているのだ? りこはこれが気に入らぬようだな。うむ……大きさか! よし、もっと大きいものを<青>に捕獲させよう。これを獲るのに適した時間は夜中なので、今日はこれで我慢してくれ」

な、なんですとぉー!? 
まさか……竜帝さんに鯰を捕まえに行かせたの!?
あの美しい女神様に、鯰獲りをさせるなんてっ!
しかも深夜にぃいいい~!?

「こ・こ・こ、これでいいから! うん、気に入りましたから!」 

これもやっぱり、自業自得?
あの場できちんと、話し合うべきだったんだあぁ~。
竜帝さん・金魚さん、ごめんなさい!

「そうか、気に入ったのならば良い。人間の女共には、これの煮込み料理が美容に良いと流行っているらしいぞ? 儲かりそうなので、<青>が年明けから養殖を始めるらしい」
 
小さな白い竜の姿をしたかわゆい旦那様は、金の目を細め。
池の中の鯰を満足気に眺めて、そう言った。

一晩で金魚さん達を完食したこの鯰さんは、図鑑で飼育方法を調べていたら雌だと判明した。
私は彼女を‘ナマリーナ’と名づけた。

図鑑によるとナマリーナ嬢は生後半年で、3メートル位に育つらしい。

「さ、3メートル……」
 
春になったら湖に放そう。
秘かに誓った私だった。


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