四竜帝の大陸【青の大陸編】

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竜帝さんは<電鏡の間>に徒歩で戻った。
私と一緒に術式で、ハクちゃんに連れて行ってもらったほうがと提案したけれど。

--歩きながら頭ん中を整理すんから、いい。……<黄>の野郎、調子に乗りやがって!  

真っ青な髪を結い直しながらぶつぶつと何か言い、大股歩きで去っていった。
お顔以外は全身包帯という状態なのに、あんなに動いて大丈夫なのかな~。
食欲もすごくあるし、ダルフェさんよりも丈夫な身体らしいから……仕事しても、平気なのかな?
とりあえず。
他の竜帝さん達へご挨拶に<伝鏡の間>に行くことは、決定したんだし。
よし、軽くお化粧直しをしようっと……一応ね。
こっちの世界に来てから、私は中学生以来の薄化粧。
以前は化粧下地にコンシーラー2種、ファンデに仕上げのパウダー等々。
アイメイクも気合を入れていたけれど。 
今は軽~くお粉をつけ、チークをちょっと入れて……口紅を塗ってぱぱーっと、終了。
3分もかからない。
最初は、物足りない気もした。
でも、すっかり慣れてしまった……とっても、楽だし。
私の周りには綺麗な人ばかりだったから、かえってメイクへの情熱(?)が失せた。
カイユさん、セシーさん、ミー・メイちゃん……侍女さん達だって美人さんばかり(採用基準に容姿が入ってるとしか思えない)だった。
天然美人さん達に囲まれてたら、もうすっぴんでもいいやとさえ思えてくる。
私なんかお化粧しても、しなくてもたいして変わらないんだって……。
そうは言っても、お化粧を捨てきれないのが女心よね~。
あ、カイユさんがくれた口紅をしていこう。
ハクちゃんが、似合うって言ってくれた色……。

「ハクちゃん、いったん下ろして。ちょっと準備をし……きゃっ!?」

一瞬で景色が変わった。
視線の高さも……ハクちゃんが座ったここは、寝室のベッドじゃありませんか!?

「りこは、したいのか?」

はいっ!?

「りこは移動したいか? 確かに我は大陸を移るつもりだったが……。りこが此処を気に入っておるなら、無理に移動せずとも良い」

あ、お引越しの話ですね……。
つい、そのっ、あのっ、一瞬セッ……のことかと思っちゃった。
ハクちゃんとめでたく無事にいたした日、食事をしながらカイユさんから竜族の結婚について、少々お話があったので……勘違いをしちゃいました。
だって、そのっ。
竜族のハクちゃんは、蜜月期とかいう特別な期間真っ最中らしいのだ。
蜜月期は、竜の繁殖期間。
奥さんが妊娠するまでその状態が続くって、カイユさんが言っていた。
妊娠したら、出産までは生殖機能が止まる。
その代わり、相手が妊娠するまでの蜜月期は強い性的欲求と異常なまでの雌への独占欲を竜族の雄は持つ……帝都への道中でも、簡単な説明を受けてた。

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