四竜帝の大陸【青の大陸編】
そう言った我に、ダルフェは緑の目玉を天へ向けて言った。

ー-ったく。こんな男の嫁さんになって、ほんと苦労すんなぁ~姫さんは。

ダルフェはりこにやる衣装を縫っていた手を止め、絹糸のついた針の先を我に向けて言った。

ーー俺らがジリを連れて帰ってきて、何日後でしたかねぇ。姫さんがカイユに紙切れ渡して、初めての試験で6点なんて点数とっちまって、あんたに申し訳ないって言ったそうですよ。こんな自分じゃこれからもあんたに恥かかせる、どうしようって……あの子の気持ち、旦那は分かります? 

恥?
りこは我の自慢の妻で、宝物だ。
だいたい我は恥などという感覚を持ち合わせておらんので、恥はかかん……かけんぞ?
 
ーーあのねぇ~、思考回路が‘いっちゃってる’あんたと普通のあの子は違うんすよ。異界人だって、こっちの女と同じです……ほんの少しでも、あんたに手が届くように。あの子なりに必死でもがいてんですよ? 

手が届く?
出会った時から届いておるぞ?
竜体だとりこのほうが背が高く、腕も長いしな。
もがく必要性皆無だと思うが。

ーーふう。まったくっ、困ったちゃんだねぇ……ブランジェーヌがあんたは女にとって最悪な男だって、よくぼやいてたっけなぁ。そのあんたが<俺の娘>の男になるなんてねぇ。カイユに会えたし子供もできて……しかも、旦那とこんな会話するようになるなんてなぁ~。運命って面白いっすねぇ? 生まれてきて……産んでもらってブランジェーヌには感謝っすよ、はははははっ!

溜息をついたと思ったら、大笑い……我には理解不能だった。

我が理解したいのはりこだけなので、晴れやかに笑うダルフェは放置してりこの眠る寝台へと転移して戻った。
りこを起こさぬように慎重に枕の下に腕を入れ、“ぱじゃま”を取り出す。
竜体は腕が少々短いので、結局は肩どころか頭部まで入れることになってしまったが……ふむ、奥に入れすぎたな。

我は独力で、ぱじゃまが脱ぎ着出来るようになったのだ。
ぱじゃまで人前に出てはいけない……どんなに自慢したくともな。
我はちゃんと、りこの言いつけを守っておるのだ。
偉いぞ、我よ!

ぱじゃまを身につけ、帽子を被ってから枕に顎をのせた。
その夜2回目のおやすみの接吻をし、我はりこの寝顔に魅入った。
 


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