四竜帝の大陸【青の大陸編】
『で、閣下と俺のハニーは何をもめてんの?』

そう。
神出鬼没に現れても誰も驚かないこの人は、カイユさんの旦那様なんです。
気配無く現れたり、いつの間にかいなかったり。
最初はびっくりしたけど……慣れてしまった。
なんたって、竜のいる世界。
私の常識を超えちゃってることが多すぎるから、害の無い事柄に関してはスルーする方針にした。
   
ちなみに。
この人は大変貴重な存在なのです。
ハクちゃんが離宮に入ることを認めている、唯一の男性!

『えと、あの! 帝都に行くとか話してた。そしたら二人、もめる開始。その後は会話、聞き取れ無いです』
『ふーん。ま、察しはつくねぇ。……おい、ハニー! あまり興奮するな。胎教に悪い』

スマートな動作でカイユさんの手をとり、キスをした。 
ハクちゃんが彼を許可した最大の理由が、これ。
妻であるカイユさんが妊娠しているからだった。
だけど、ハクちゃんは人道的考えから許可を出したのでは無かった。
悲しいかな、ハクちゃんはそんなに甘くなかった。
(ま、杖をついて現われた語学教師にも容赦無かったしね……)

カイユさんの種族は伴侶以外にあまり性的興味を持たないこと。
特に妻が妊娠期間中(長命な種族のため、なんと10~15年!)は夫の生殖機能が止まる。
そして、ひたすら奥さんとお腹の赤ちゃんの為に尽くす。

つまり生物学的見地から許可を、ハクちゃんは出したわけ。
なんでハクちゃんはそんなにも他の異性(つまり雄)を、私の周りから排除しようとするのか?
セシーさんが言うには、それが竜の性質だからで済んでしまった。

う~ん。
竜同士なら納得できるけど。
私は人間。

何より、ハクちゃん自身が私と繁殖(?)しようとは、考えてないと思う。

1ヶ月間、お風呂もベットも一緒だけど何も無い。
って、いうか無理!

小型犬サイズの竜が人間の私にむらむら……あり得ない。
妻……というよりお母さん気分だし。
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