四竜帝の大陸【青の大陸編】
『え、えと。帝都、そのうちです。今、私、覚えることたくさんあり、移動は大変』
『カイユがお連れ致します。快適で楽しい旅になりますわ! 帝都までは大小4つの国がありますから、観光しながら参りましょう。我が主が費用を総て負担すると申しておりますし』
『お黙りなさい。貴女は今は侍女でしょう? お下がり!』

セシーさんが扇子を音をたてて閉じ、さらに言う。

『第一、会ったことも名前も知らぬカイユ殿の主になんでトリィ様が? 必要ありませんわ。他国観光をご希望なら、こちらでいくらでも用意致します。ね、トリィ様。遠慮なさる必要は無いわ。貴女にはその権利があるのよ? 貴女をこの世界に落とした責任はこの国の王子達にあるのだから』
『私はトリィ様の侍女であって、お前の侍女では無い! この1ヶ月、大人しくしていれば付け上がりおって、この‘魔女‘が!』

カイユさんとセシーさんの会話は早口だし、知らない単語が多くて私にはほとんど理解不能の域だった。
雰囲気と拾った単語から察するに……また私のことでもめてるの?

ど、どうしよう!
私の憩いのティータイムが!

『あら、やる気? よろしくてよ。このところ戦も無くて、身体がなまってたから。丁度いい準備運動になるわ』

セシーさんが優雅な仕草で足を組み替え、にやりと笑った。
ああ、会話が早くてついていけない~!
自分のヒアリング能力の低さが恨めしい!

「ハ……ハクちゃん、なんとかしてよっ!」

仲裁できるのは、この場にはハクちゃんしかいない。
多少の不安はあるけれど。

「ふむ」

ハクちゃんは書き取りしていた手を止め、私に顔を向けて金の眼を細めて言った。

「わかった。この二人を黙らせればいいのだな? 殺さぬ程度にな」

はい?
ちょっと待って!

『勘弁して下さいよ。相変わらず使えん方ですねぇ』

え?
この声!

「ダルフェさん! お帰りなさい、グッドタイミングです!」

思わず、日本語で言ってしまった。

『姫さん……俺に異界語は禁止だよ? 今夜のデザートは無しだな』

両手で口を押さえた私を、緑の瞳が見下ろした。

『はい、です』

ああ、やってしまった。
彼の作る食事はすごく美味しいの。
中でも、数種類が綺麗に盛られたディナーのデザートが最高なのに!
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