四竜帝の大陸【青の大陸編】
魔女は我の考えを見抜いていた。
この1ヶ月の間。

我が人間のつがいを得たことを知った内外の王侯貴族・商人などがひっきりなしにセイフォン王にりことの謁見を求めたが、セシーはりこには告げなかった。
セシーは何処の誰が来たかを我に細かく報告し、言った。

――この者達はトリィ様にとって害虫ですわ。どうなさいます? 私どもで処理するもよし、御自ら処分されるもよし。現段階では我が王が竜の蜜月期の性質を理由に全ての謁見を断ることができていますわ。でも、長くは持ちません。

――120年前の大戦の折に国土の半分を列強に奪われた現在のセイフォンでは、大国に逆らうことは不可能。
彼等がトリィ様を自国に招きたいと言い出せば、彼女を差し出すしかありません。

――でも、彼女自身がセイフォンにいることを希望すれば彼等も強く出られません。たった1度で良いのです。

――トリィ様が貴方様と共に公の場にて宣言して下されば。「セイフォンが気に入っている」と、そう言って下さればセイフォンは、この大陸で確固たる立場を手に入れることが出来るのです。

――<監視者>のつがいが‘気に入ってる‘国を蔑ろにすることは<監視者>に盾突くに等しいのですから。私はこの国を守りたい。戦うことは好きですが‘戦わせる‘のはもうしたくない。
 
 
魔女の心に嘘偽りは無かった。
 
我を欺くことは不可能なのだから、魔女は本心を隠さない。
 
あれは嫌な女だが、愚かではない。
我がりこに与えたいものを良く理解しているからこそ、今のままのりこ……我の【力】を欲の為に使おうなどと思いつきもしない、無知な娘でいさせようとしている。

反対に青の竜帝はりこに知識と情報を与え、自分がこの世界において非常に重要で危険な存在であるか認識させるべきと考えている。
この1ヶ月、青の竜帝はりこに必要な事を全て隠さず話せと念を送ってきていた。
 
我には、出来なかった。

我はりこにそのような重責を負わせてしまったことを、りこに知られたくなかった。
それを知ったらりこがどう思うかが、怖かった。

りこに恨まれ、嫌われ、憎まれるのが恐ろしかった。


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