四竜帝の大陸【青の大陸編】
『で、旦那。俺はどうしたらいいんですか? 取りあえず姫さんを気絶させるとか?』

=この、愚か者が! りこに乱暴なまねは許さん。身体が傷ついたらどうする!

『俺は力加減を間違えたりしませんよ。……それに姫さんを傷つけたのは旦那じゃないですか』

=我が? ……我はっ!


「なんで、なんでよ! 私がこんな目にあうの!」
「分かんないことばっかり! 知らないことばっかり!」
「ハクちゃんだって……私に言ってくれないことがあって!」
「来たくて来たんじゃないわよっ! つがいになりたくてなったんじゃないわよ!」

りこが叫ぶ言葉は我を打ちのめす。
世界最強の我の身体が、恐怖に凍りつく。

「もう帰りたい! こんな世界はもう、居たくない! 家に帰してよ!」
「つがいなんて、やめる!」

つがいを。
やめる!?



『りこ! ……わ、我を捨てないでくれっ!!』



我はりこに手を伸ばし、しがみついた。
このまま離れたら、離したらりこを失うと思った。

【両腕】をりこの背に回し、我の【胸】にりこを閉じ込める。
隙間無く身体を合わせ、逃すまいと縋りつく。

『我を捨てないでくれっ』

背に回した【指】に、りこの髪がさらりと触れる。

『捨てないでっ……』

我の【髪】の色とは対照的な、漆黒の髪。
ずっと、触ってみたいと思っていた。

体温の無い我の身体と違い、温かなりこの肌。
ずっと。
抱きしめたいと思っていた。

『りこ』

知られたくなかった。
傷つけたくなかった。

泣かせたくなかったのに。

< 61 / 807 >

この作品をシェア

pagetop