四竜帝の大陸【青の大陸編】

89

オフラン君とパスハリス君が、温室に大きなテーブルを運び込んだ。
厚い天板の縁には百合のような花が彫られていた。

大きな長方形で……5メートル位あるそれを、彼等は2人で軽々と持って庭から現れた。

先に温室に来て待機していたヒンデリンさんが温室の扉とその両隣のガラスを外しておき、そこからテーブルを温室へと入れて中央に設置した。
ヒンデリンさんは数ミリ単位で場所を指示していた。

その細かさ、几帳面さにパスハリス君は不満気に頬を膨らませ、オフラン君は忙しなく何度も瞬きをしながらテーブルの脚の位置を確認している。
温室の隅の方でハクちゃんを抱っこしながらその様子を眺める私に、パスハリス君は言った。

「ねぇ、奥方様。すんごい面白い日になりそうじゃない? 僕、わくわくしちゃうっ……痛っ!? いてててっ~、なにすんのさっヒン!」
「……」

パスハリス君の薄いブルーの瞳が、ヒンデデリンさんを睨む。
ヒンデリンさんがパスハリス君の右ほっぺを、無言でつまみあげていた。

「面白がるな、パス。私達は本部で待機だ。……失礼致します、ヴェルヴァイド様、奥方様」
「あ、ありがとうございましたっ」

ぼーっと3人のやり取りを見ていた私は、あわてて頭を下げた。
ハクちゃんは彼等の方を見もしなかった。

金の目を瞑り、まるでお人形さんのように静かだった。

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