四竜帝の大陸【青の大陸編】
「あ、この子がナマリーナ嬢? うん、なかなかの美人さんだ。ナマリーナ嬢、僕はセレスティス。よろしくね」

セレスティスさんは池を覗き込み、底にいるナマリーナを見ながら言った。
この人って、何気にマイペースというか……。

「術士のお嬢さん。初めまして、僕はセレスティス……あぁ、君は名乗らなくて良い。挨拶も要らない。僕はよろしくするつもりも、されるつもりもないから」

視線はナマリーナから動かさずに言った。
セレスティスさんはミー・メイちゃんを見なかった。
ミー・メイちゃんは自分の右手を左手でぎゅっと握って、横に立つ竜帝さんを見上げた。
竜帝さんはミー・メイちゃんに軽く頷き、視線をセレスティスさんに戻した。

「ひさしぶりだね、セイフォンの皇太子。ふふっ……もう陛下より身長が高くなったのかな? 人間はあっという間に成長するね」

池の縁に腰掛け、膝に左手を置き。
右手を顎に添えて……ダルド殿下の姿が、水色の瞳に映っていた。

見てる、ちゃんと。
セレスティスさんはミー・メイちゃんの時と違って、ダルド殿下をしっかりと見て言った。

「あれ? 顔色が悪いね。気分が悪くなってしまったのかい? ああ、そのままでけっこう」

椅子から腰を上げようとしたダルド殿下に、セレスティスさんは‘座ってなさい’と右手を上下に動かした。

相変わらずの、優しげな笑み。
カイユさんにお母さんの事を聞いていなかったら、その笑みを見てこんな不安な気持ちにはならなかった。

それほど自然、だから不自然。

「……貴殿はカイユ殿のお身内ですか? よく似ていらっしゃる」

ダルド殿下の言葉に。
その笑顔が。

「……陛下」

消えた。

「陛下……僕に内緒で、やってくれたね?」

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