四竜帝の大陸【青の大陸編】
魔女。

急にそう言われても、私には話のつながりが見出せない。
ハクちゃんの人型のことから、なんで魔女?
私は魔女……セシーさんが魔女!?

「術士とはいえ、これは普通の人間であるミー・メイが知る必要の無いことであり、知って欲しくないことなのです……ふふ、魔女ってご存知かしら?」

魔女って。
魔法を使ったり箒に乗って飛べる、あの魔女? 
竜がいるんだから、この世界には魔女がいるって言われても「そうなんだ~」って感じですけれど。

「そのお顔……やはり、まだ魔女をご存知ありませんでしたか。陛下、私の口からでもよろしいかしら?」

短い両手を突っ張って、むくりと起き上がった青いおちび竜はくわっとお口を開いて言った。

「かまわない。あのじじいはおちびに話さなかっただけで、意図して教えなかったわけじゃないからな……多分」

竜帝さんの言葉にうなずき、セシーさんは話し始めた。

「魔女はこの世界の『記憶』であり『記録』。私が死ねばそれがこの世界の誰かへと移り、その者が魔女となるのです。術士のように生まれつきのものでも、望んでなるものでもありません」
「魔女は……移る記憶……記録?」

この世界の魔女は、私の世界の魔女とは全く違うんだ……。
前にハクちゃんがそんなようなことをちらっと言ってたけど、私には意味がさっぱり分からなかった。

「私は代々の魔女の知識を受け継いでます。ですから人間社会では一部の者しかしらぬとされている事を……<監視者>が<ヴェルヴァイド>であり、竜族同様に人型へと変化する存在であることも知っていました」

じゃあ。
竜族では誰もが知っていることも、人間には知られていない……<監視者>が<ヴェルヴァイド>ってことも?

「私はさきほど面白いからだと言いましたが、少し違います……私はあの方が苦悩するさまが見たかったのだから」
「苦悩……セシーさん?」

セシーさんは膝においた手を、ぎゅっと握った。

「ヴェルヴァイド様は貴女を傷つけるのを恐れるあまり、竜体のまま過ごされていた。幸いにも貴女の教師役を予定通り手に入れましたから、間近であなた方を観察することが出来ました」

教師役を予定通り……観察?
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