四竜帝の大陸【青の大陸編】
「私、そこまでもの好きではありませんもの」

セシーさんは。
心底嫌そうに、そう言った。

「えっ?」

も。
 
もの好き?

それって。
もしかして、私のことですか!?

私が口に出して言うより先に。

「セシー、それは違うぞ。お前は例外だ。竜族の雌には全くもてないヴェルだけど、人間の女はけっこう寄って来るからな。だからおちびは、もの好きな女なんかじゃない。じじいの選んだ嫁に、失礼なことを言うな」
「……竜帝さん」

私は感激してしまった。
竜帝さんが、こんな風に私を……嬉しいです!

「いいか、セシー。こいつはなぁ~」
 
ぱたぱた飛びながら、ぽっこりお腹を突き出して。
腰に手を当て、うんうんと頷きながら。
なぜか得意げに、青いおちび竜が言った。

「こいつは、真性鱗フェチ女だ!」
「は? 鱗?」
「う~ん……はっきり言うと、変態か? 異世界産の新種の変態? う~ん、おちびはどう思う?」

サファイヤのような美しい瞳がクルンと回った。

「なあ、どう思う?」

その澄んだ瞳には、悪意の『あ』の字も存在しない。

「………」

竜帝さん。
私に訊かないでください。

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