四竜帝の大陸【青の大陸編】

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ま、おちびのことは置いといて。おい、セシー。これの……車椅子の代金は、どこに請求したらいいんだ? それは黒の大陸で青の大陸(こっち)輸出用に作った試作品で、まだすっげぇ高いんだ。あっちで普及してるのは機械化が進んでて、そのままじゃ規制にひっかかって輸入できな……え~っと、<黒>からの納入証明書がここら辺に……」

竜帝さんは翼をぱたぱたと動かし、本や書類が積み重なった机の上に移動した。
そこを漁るようにがさがさと書類の山を崩し、一枚の紙を取り出した。

「ほら、見てみろ。<黒>の爺さんの直筆サインだ。性格の悪さが滲み出てるだろ!?」

くすんだ朱色をした本の上にちょこんと座って、車椅子に座ったセシーさんに向かってひらひらとそれを振った。

「ふふっ、相変わらず達筆ですわね。そんなに高価な物でしたの、これ。そうですわねぇ……請求書は成り上がりの盗賊国家、ホークエのガスティエン坊ちゃん宛てでお願いします。この足のお礼もしたいので、私が自分で届けますわ」

ふっくらした唇に指先を添えて言うセシーさんに、竜帝さんは尾をゆらゆらと左右に揺らしながら言った。

「ガスティエン王子にお前が届ける、か……ほどほどで頼む。入金を確認する前に死なれると困るからな」
「殺しはしません。個人的にお仕置きをしてさしあげるだけですわ。……トリィ様」
「は、はいっ」

2人の少々バイオレンスな会話にどきどきしていた私に、セシーさんが言った。

「ミー・メイの……あの子の話を、聞いてやっていただけますか?」
「はい、もちろんです。竜帝さん、ミー・メイちゃんとはお庭で話しをしてもいいですか? 今日は日差しが暖かくて、気持ちがいいから」

ミー・メイちゃんは私と2人きりで話をしたいようだった。
ここではちょっと……竜帝さんとセシーさんに席を外してくださいなんて、言い難いし。

「ん~……別にいいけどよ。ここから見える範囲にしてくれ。おちびなんかあったら、俺様がじじいにぼこられちまうんだからな……ま、慣れてるけどよ」

竜帝さんは四本の指を器用に使い、喋りながら手に持っていた紙を折り始めた。
あっという間に、紙飛行機が出来上がった。

それって、大事な納入証明書なんじゃ……。
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