四竜帝の大陸【青の大陸編】
「セシー。おちびと会ってる時はミー・メイには一切の術式の仕様を禁止する。もしそれを破ったら、俺様があいつを処罰する。あのミー・メイが、おちびに何かするはずはないけどな……もし、おちびに何かあったら、セイフォンはとんでもない災厄に見舞われることになる。俺様……四竜帝といえど<監視者>が報復行動に出たら、止められない」

<青の竜帝>として言う声は抑揚がなく平坦で、もしそうなった場合の事態の深刻さを強く感じさせた。
でも、続いたセシーさんの声はどこか楽しげだった。

「あら? 陛下のお考えは少々甘いのでは? ふふふっ……私はセイフォンそのものが地上から消えると思いますわ。それにあの方がなさるなら災厄ではなく、『天災』が正しいのではなくて?」
「天災、か。そうだな……そうかもしれないな」

紙飛行機を左手に持った青い小竜は、セシーさんの言葉に目を細めた。
それは満足気でもあり……悲しそうでもあった。

どちらなのか、私には分からなかった。
もしかしたら、その両方なのかもしれない。

「天災は誰にも防げず、止められない。我々はただそれが過ぎ行くのを地に伏して願うだけ……。さぁ、トリィ様。先に庭でお散歩でもして待っていらして。すぐにミー・メイを追わせますわ」
「はい。ありがとうございます」

天災。
その言葉にハクの……この世界での<ヴェルヴァイド>の存在の重みを、あらためて知った気がした。
  
---四竜帝といえど<監視者>が報復行動に出たら、止められない

竜帝さんは、そう言った。

報復行動。
つまり、私の……私のせい。

言外に。
竜帝さんは私に、釘をさしたんだと思う。

軽はずみに、不用意に。
ハクに助けを求めるな、と。 
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