四竜帝の大陸【青の大陸編】
スキッテルさんはドアを押さえたまま、固まった。

『いらっしゃいませ』の『せ』の形を作ったまま、口の動きが止まっていた。
そこに居たのは。
その人は。

この世界に来てからカイユさんを筆頭に美人さん(もちろん女神様もここに入れちゃいます)に囲まれて生活して以前より美人慣れ(?)した私ですら、言葉を失うほどの美女だった。

赤ワインのような深みのある緋色のベアトップのロングドレス。
ウエストがきゅっとしまったドール型のドレスで、腰周りには優雅なラインを描くドレープが入っていた。

胸元から腰にかけて、金糸で刺繍された花々が輝いていた。
黄色人種の私とは違う白い肌、セシーさんに負けていないほど豊かな胸と細い腰。

うわわわっ!?
美人でスタイルも抜群です!

「き、綺麗……」

頭頂部で巻かれた明るい赤茶の髪には、宝石が煌めく金細工の髪飾り。
ボリュームのある長い睫毛に、薄い茶色の瞳。
華やかで品のあるローズ系の口紅が塗られた唇は、下唇がふっくらして色っぽさと可愛らしさが絶妙なバランス。

「わたくし、ずっと貴方様に御会いしたかった……」

薄茶の瞳が見ているのは店主のスキッテルさんでも、もちろん私でも無い。

「<監視者>様。御久しゅうございます」

ハクちゃんだ。
ハクちゃんの知り合い!?

彼女の言葉……スキッテルさんのお客様なんじゃなくて、ハクちゃんに会いに来たハクちゃんのお客様ってこと?

私とスキッテルさんは“会いたかった”と美女に言われたハクちゃんを、同時に見た。
彼の反応は……あれ?

ハクちゃんはスキッテルさんに渡された箱を、瞬きもせず見ていた。
どうやら、珍しくとても興味を持ったらしい……まぁ、自分が目から出したものがアクセサリーになったんだから、当然といえば当然だけど。

でも、でもですね。
少々、かなり場違いではありますが豪華絢爛に着飾った美女を完全に無視してますよ、この人ったら!

「ハクちゃん、ちょっと!」

私は小声で言いつつ、彼の脇腹を肘でつついた。
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