四竜帝の大陸【青の大陸編】
一気に眉が釣り上がったカイユさんを完全無視に無視し、皇女様は私へと近寄って……私へと差し出した腕の動きに合わせるように、彼女の香水がふわりと香った。
華やかさを甘さが包み込んだような、フローラル系の香りだった。
それは誰もが使えるような香りではなくて、強いを感じさせる香りで……この香り、昨日は気がつかなかった。
昨日はつけてなかったのかな?
「これが何か、わたくしに教えていただけるかしら?」
彼女が私へと差し出した手には、光沢のある白い布に包まれた平たい物体。
手入れされた爪を持つ指先で、皇女様は包みを取り去った。
現れたのはルビーピンクの……。
「それ……携帯電話っ!」
しかも、妹のりえが前に使っていたのと同じ機種!
確か着信時やケータイの開閉時に、背面ディスプレイに綺麗なイルミネーションが……りえのと同じ機種なんて!
りえ、りえちゃん……やだ、泣きそう!
「あ、あの、これは遠くの人と連絡をとる道具なんです」
「つまり、伝鏡のようなモノかしら? あら、お手が震えてますわ」
手が震えているのは、自分でも分かってた。
家族の顔が、声が。
頭の中で膨張して弾けそうなほど、一気に浮かんでくる。
「用途は基本的には伝鏡と同じですが……これには……画像や音楽も入れられて」
もし……もし、もしもこの携帯が使えたらっ!
この世界から家に電話できるはずないって、中継アンテナ塔さえ無いんだから使用不可能だってことも頭では理解しているのに、心のどこかで奇跡に期待してしまう自分がいる。
「ハク、ハクちゃん! これ、すごい物だよ!? 妹も同じの持ってたのっ!」
興奮を抑えきれずに勢いよく振り返って、私がハクちゃんにそう言うと。
いつものようにハクちゃんは足を組んで座り、金の眼で私を見ていた。
瞬きもせず、真っ直ぐに。
「そうか」
色素の薄い唇が、ほんの少しだけ孤を描く。
整い過ぎて作り物のような顔の印象が、それだけで随分と変わる。
氷の彫像に、命が芽吹く。
「すごい、か。良かったな、りこ」
「ハクちゃん……」
ハクちゃんの顔と声に、興奮がすっと冷めた。
あぁ私、またやってしまった。
ハクちゃん……今の私を見て、どう思っただろう、どう感じただんだろう?
華やかさを甘さが包み込んだような、フローラル系の香りだった。
それは誰もが使えるような香りではなくて、強いを感じさせる香りで……この香り、昨日は気がつかなかった。
昨日はつけてなかったのかな?
「これが何か、わたくしに教えていただけるかしら?」
彼女が私へと差し出した手には、光沢のある白い布に包まれた平たい物体。
手入れされた爪を持つ指先で、皇女様は包みを取り去った。
現れたのはルビーピンクの……。
「それ……携帯電話っ!」
しかも、妹のりえが前に使っていたのと同じ機種!
確か着信時やケータイの開閉時に、背面ディスプレイに綺麗なイルミネーションが……りえのと同じ機種なんて!
りえ、りえちゃん……やだ、泣きそう!
「あ、あの、これは遠くの人と連絡をとる道具なんです」
「つまり、伝鏡のようなモノかしら? あら、お手が震えてますわ」
手が震えているのは、自分でも分かってた。
家族の顔が、声が。
頭の中で膨張して弾けそうなほど、一気に浮かんでくる。
「用途は基本的には伝鏡と同じですが……これには……画像や音楽も入れられて」
もし……もし、もしもこの携帯が使えたらっ!
この世界から家に電話できるはずないって、中継アンテナ塔さえ無いんだから使用不可能だってことも頭では理解しているのに、心のどこかで奇跡に期待してしまう自分がいる。
「ハク、ハクちゃん! これ、すごい物だよ!? 妹も同じの持ってたのっ!」
興奮を抑えきれずに勢いよく振り返って、私がハクちゃんにそう言うと。
いつものようにハクちゃんは足を組んで座り、金の眼で私を見ていた。
瞬きもせず、真っ直ぐに。
「そうか」
色素の薄い唇が、ほんの少しだけ孤を描く。
整い過ぎて作り物のような顔の印象が、それだけで随分と変わる。
氷の彫像に、命が芽吹く。
「すごい、か。良かったな、りこ」
「ハクちゃん……」
ハクちゃんの顔と声に、興奮がすっと冷めた。
あぁ私、またやってしまった。
ハクちゃん……今の私を見て、どう思っただろう、どう感じただんだろう?