四竜帝の大陸【青の大陸編】
「だいたいねっ、こんな大変なことになってるのにお風呂入ってからくるなんて、あんたどういう神経してんのよ!? イドイドはどろべちゃな溶液で、あんたはつるすべな温泉……キィイイイイッツ! ムカツク、ムカツク、ムカツクゥウウウウ~!!」

カイユが伝鏡の間に四竜帝を呼び出し、俺が伝鏡の調整作業を終わらせ全ての準備を終えてしばらくしてから現れた陛下は“綺麗”だった。
血塗れだった青い竜は風呂に入り汚れを洗い流し、身支度を整えて四竜帝の待つ伝鏡の間に現れた。
それがヒステリックな<黄の竜帝>を、さらにヒートアップさせた原因の一つだろう。

---間に合わんな……すぐに風呂へ行け。お前は“綺麗”でなくてはならぬのだ。

あの場に居て旦那の言葉を聞いていた俺は、この世にある『青』の持つ美の頂点に座すかのような美しさに納得し、満足した。
そうだ。
この若き<青の竜帝>は“綺麗”でいなくてはならない。
どんなに辛く、苦しくとも。
陛下は“ヴェル”の望んだように、“綺麗”であり続けるだろう。

「キィイイイイッ~! 黙ってないで、なにか言いなさいよ<青>!」

短い足を踏み鳴らし、黄色い竜が喚く。

「<青>、私は一分一秒が惜しい身だ。お前の考えを述べよ」

 自分の額を爪でこつこつと叩き、黒い竜は陛下に言葉を求めた。
「躊躇いも遠慮も無用よ、<青>。答えられぬならば、そのような者は不要。<黄>の言うように代替わりなさい。ダルフェ、そうなったら貴方が次代が四竜帝として使えるようになるまで青の一族を守りなさい。<色持ち>であるお前には拒否権は無く、これは決定事項よ」

扉の前でカイユと並び立つ俺へと投げられた<赤の竜帝>の言葉に、カイユは眉一つ動かさなかった。
その水色の瞳は、主である<青の竜帝>からそれることは無かった。

「赤の竜帝陛下、俺の所有権は四竜帝から<ヴェルヴァイド>に移ったはず。……あんた等四竜帝には俺に指図する権利なんかねぇってこと、わかってるんすか?」

わざと笑顔で答えた俺に、<赤の竜帝>は尾先で床を3回打ち付けた。
その様はなぜか楽しげで、叱咤されると考えていた俺はかなり驚き。
少し、困った。
 
 

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