リーシュコードにて



「どうして、こんな……」



 全く出る幕のない玲子は、

泣きそうになりながら悪夢のような化粧室を後にする。



「……誠、さん? 嘘だろ、最悪」



「しゃべるのは後だ、全部吐け。そしたら、楽になるから」



 そして背中で2人の声を聞きながら、大鍋いっぱいの湯を沸かし、

栄治のリュックからパジャマ代わりのスウェットを、厨房の棚から大量のタオルを取り出す。



 床中に散らばったページの千切られた漫画を片付けたとき、

2人がやっと化粧室から現れた。



 玲子は、栄治が誠に肩を借りながら自分の脚で歩いていることに、

とりあえずほっとする。


< 150 / 200 >

この作品をシェア

pagetop