リーシュコードにて
「どうして、こんな……」
全く出る幕のない玲子は、
泣きそうになりながら悪夢のような化粧室を後にする。
「……誠、さん? 嘘だろ、最悪」
「しゃべるのは後だ、全部吐け。そしたら、楽になるから」
そして背中で2人の声を聞きながら、大鍋いっぱいの湯を沸かし、
栄治のリュックからパジャマ代わりのスウェットを、厨房の棚から大量のタオルを取り出す。
床中に散らばったページの千切られた漫画を片付けたとき、
2人がやっと化粧室から現れた。
玲子は、栄治が誠に肩を借りながら自分の脚で歩いていることに、
とりあえずほっとする。