リーシュコードにて



 玲子は、幾度も呑んだ苦い潮水と涙を思い出し、カーゴパンツの下の左脚に爪を立てると、

射殺すような眼差しを窓の外の海にそらした。



 緊急手術と地獄のリハビリを経て、その左脚は日常生活をこなせるようにはなっていたけれど、

サーフィンをするのは一生無理だとあのとき医者から言い渡されていた。


 
 それでも夜明けと共に海に出て、利かない左脚をひきずりながら、

初心者用のポイントでボードを繰り返し走らせた日々は、

奇跡を信じて無様にあがいた頃は、退院後どれぐらいの間続いたのだろう。


 
 やがて玲子は、自分に突きつけられた現実を認め、一晩ビーチで泣き明かした。



 それは、かつては蜜月を過ごしたサーフィンに失恋した瞬間だった。







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