最後の恋、最高の恋。
「菓子折り持ってきてないけど、礼儀知らずって思われないかな?」
「大丈夫、美月を拉致して紹介するって先週言っておいたから、美月が無理やり連れてこられたって分かってるから」
にっこり笑いながら私の腰に腕を回して玄関の中へと誘う学に逆らわずに、ゆっくりと学の生まれ育った家へと足を踏み入れる。
白い大理石のような滑らかな石造りの玄関に靴を揃えて脱いで、誰もいないそこで「お邪魔します」と言いながら毛の長い茶色の絨毯に恐々と足を乗せた。
そんな借りてきた猫状態の私に学は「どうぞ」と言いながら手を握って、長い廊下を歩いていく。
廊下は両手を広げても届かないくらい幅があって、なのに前面に絨毯が敷いてある。
この廊下専用にこの絨毯をあつらえたに違いない。
これで甲冑とかが飾ってあったら、西洋のお屋敷だ。
でも甲冑も置物も壺も飾ってなくて、飾ってあるのは小さな写真立てとか学たちが小さいころ書いたであろう絵だったり、まるで普通の家のような飾りだった。
そんなところに親近感を覚えて、少しだけほっとする。
……けれど、やっぱり一般家庭とは大きくかけ離れたこのお屋敷に萎縮しているのは事実で、こうやって学が手をひいて歩いてくれていなければ、私はずっと玄関から動けなかっただろう。