最後の恋、最高の恋。
あらかたかけおわって掃除機を元の場所に戻して、お客様用のカップにインスタントコーヒーを作って女の人の前に置いた。
こうやってしまうと本当に家政婦みたいだけれど、これはこの部屋に来たお客様をもてなすのが当然だと思うからで。
この部屋は私の部屋でもあるとこっそり思っているし、私がもてなすのは当たり前だと思うから。
「もうすぐ坂口さんのお母さんがお見えになりますので、坂口さんになにか緊急のお話があるのならお母さんにお話しされればいいと思います」
ぺこりとお辞儀をしながら一気に言い切って、持ってきた鞄を抱えて一目散に玄関を飛び出した。
逃げ出したみたいだけれど、正直元カノと係わりたくない。
元カノのことは私には関係ないし、そういうことは学にはっきりとけじめをつけておいてほしい。
それでもちょっぴりムカつくから、もし今日学から電話がかかってきても無視してやろうと決めてエレベーターを待っていると、開いた扉からちょうどよくお母さんが降りてきた。
「あら、美月ちゃん帰るの?」
「あ、はい。 学さんにお客様みたいで……」
その言葉にピクリと反応したお母さんは、にこやかな笑顔から一変して少し怖い雰囲気を纏った。