最後の恋、最高の恋。



「さて、どこに行こうかな」




坂口さんの運転する車の助手席に座った私は、久しぶりのシチュエーションに落ち着かないでいた。

異性の車で二人きりで出かけるのなんて、本当に久しぶりだ。

元彼は車の免許を持ってなかったから、その前の彼以来ということになる。
少なくとも2年はこういうシチュエーションになったことがなかった。


意外だったのは、てっきりスポーツカーみたいなかっこいい車に乗っていると思っていた坂口さんの車が、ファミリーカーだったこと。

これで色が白だったりしたら本当に意外だったけど、色はカッコイイ濃い紫で、光の当たり具合によっては黒にも見える不思議なカラー。

内装もシートは黒の革で、アクセサリーもシックな色で統一されているから、これはこれで彼のイメージにぴったりと言えばぴったりだった。

それにこの車は煙草の臭いが全然しない。
お父さんはよく煙草を吸うから、お父さんの車はとっても煙草臭くて乗るたびにウンザリするんだけど。

坂口さんの車は、何かの香水だろうか、柑橘系のすっきりした香りがほんのり香る素敵な空間だ。

車でさえこんなに綺麗で、こんなにオシャレなんだから、きっと彼の部屋はこれと同じかそれ以上に素敵なインテリアであふれたかっこいい部屋なんだろう。



< 39 / 337 >

この作品をシェア

pagetop