最後の恋、最高の恋。



「あのレースの小物、作ったのってクマさんですか?」


だって、クマさんのお店だし、エプロンにもレースがついてるし。

だとしたら作り方とか教えてもらえないだろうか、なんていう下心満載でクマさんに詰め寄ると、「クマさんって、俺のこと?」なんて言われて、やっぱりテーブルに突っ伏したくなった。


「クマさんか、言い得て妙だなぁ」

「……、」


さっきの不機嫌顔はどこへやら、いつものふんわり微笑みで坂口さんが同意してくれるけど、そこはスルーしてほしかった。

仕事柄、その人の特徴から人を覚えて、名前を憶えて、その人の役職などをあとから肉付けしていく覚え方をしている私は、知らない人は先にあだ名をつける癖がある。

坂口さんの場合は、稀にみるイケメンだったし、その時にフルネームで自己紹介してくれたからあだ名をつけることもなく“坂口さん”と定着してしまったけれど、これは社会人としてしてはいけない失敗だ。


私のような職業をしている人にとって、最もしてはいけない失敗だ。

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