最後の恋、最高の恋。


「誠人は本業が他にあるから、この店は夏休みと冬休みしか開いてないんだ」

「冬に来たら、暖炉の火もついてもっと温かい雰囲気になるんでしょうね」

「また冬に来よう、冬は隠れメニューで鍋があるんだ」


何気ない会話の中の、未来の約束をいちいち気にしてしまう私は、やっぱりまだまだお子様なのかも。

お姉ちゃんなら当たり障りのない返事ができたんだろうけど、好きになってしまったと気づいたばかりの人を相手に、私はなにも言うことができなかった。



好きだと、言ってくれる人のことを好きになったのだから、素直に好きと言ってしまえばいいのかもしれないけれど。

それでも彼にとっても私にとってもまだ2回しか会ってない相手なのだ。


もし付き合っていく中で、坂口さんが私に幻滅してしまったら、と考えると一歩踏み出せないでいる。

次の恋で、……ううん、現在進行形のこの恋が終わりを告げたら、私はもう二度と人を好きになることができないと思う。


要するに、臆病なだけ。

お姉ちゃんの影におびえて、またお姉ちゃんのことを好きになっていくんじゃないかって、そうなるのが怖いだけ。



なんて醜いんだろう、私は。

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