最後の恋、最高の恋。


「アイツ見た目は極上だけど、中身はただのガキだから愛想つかさないでやって?」

「……努力します」


気持ちを伝える勇気がつくその日まで、愛想をつかされないように。


その言葉は言わずに、もう一度「ご馳走様でした」と言って、笑顔で手を振る宮田さんに送られながらお店を後にした。



少し先を歩く坂口さんに小走りで駆け寄って隣に行くと、当たり前のように手を握られる。

ビックリして思わず見上げてみたけど、真っ直ぐ前を見たままの坂口さんはただ黙って歩き続けている。



「あの、ご馳走様でした」


きっと半分払おうとしても受け取ってくれないと思っていた私は、素直にお礼をするけど坂口さんは黙ったままウンともスンとも言わない。

二人分の足音と、蝉の声、草木の擦れる葉の音。

会話のない私たちを包むのは、そんな自然の音ばかりだった。


さっきは心地良いと感じた自然の空気も、重苦しい空気のせいで息苦しく感じる。


手をつないでいるのに、すごく距離が離れているような気分だ。

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