最後の恋、最高の恋。
坂口さんもそうだったらそうと、最初に言ってくれればいいのに。
「え? 知らなかったの? っていうか教えておきなさいよヘタレ!」
私が今二人の関係を知ったと気づいた店員さん……お姉さんは、矛先を坂口さんに向けて、やっぱり背中を勢いよく叩いていた。
「美月ちゃん……、紹介遅れたけどこの人俺の姉。」
叩かれた背中を痛そうにかがめながら、紹介してくれた坂口さんだけど、とても不本意そうな顔をしている。
……私にこの店員さんがお姉さんだと知られたくなかったんだろうか。
チクリと小さなトゲが心臓を突き刺す。
「どうも、学の姉の栗原茜です。 苗字が違うのは結婚したからなんだけど、一応このブランドの社長をしてます」
綺麗なお辞儀をしたお姉さんは、顔を上げると胸元のネームプレートを触った。
そこには簡単に“栗原”と書かれているだけで、社長の肩書もなにも載っていない。
でもどうしてそんなに偉い人がこんなところにいるのだろう。
社長サンって言うと、会社にずっといるイメージがあるから、ここにいることが不思議でならない。
そんな偉い人が坂口さんのお姉さん……、坂口さんも立派な会社に勤めているし、坂口さんの家族はいったいどんなエリート集団なんだろう。