30才の初恋
どうしたら良いのか分からず、中途半端な位置に立ったままでいた。


副社長には睨まれたまま。


「武井さん、中に入って下さい。斗真の怒りが爆発しないうちに。」


そう言って、ケラケラ笑う藤川様。


藤川様は謎だな。


「おい、そこで笑ってる女、お茶を入れろ。」


私は副社長の秘書じゃないし、あ、受付に帰らないと不味い。


私の言葉を遮られた。


「お茶お願いします。明日美ちゃんはすっかり僕を忘れているようだね。」


え、藤川様は私を知ってるんですか?



副社長のおじいちゃんですよね。



思い出せない。



お茶を用意すると、藤川様が私にも座るように進める。


「あのすみませんが、私はまだ勤務中で受付に戻らないといけません。」


又、清水斗真が睨む。


怖いです。


「受付に電話を入れた、昼食を取っていいそうだ。鰻重頼んだから食ってけ。」


それって、命令ですか。


私が鰻好きなの、どうして知ってるんだろ。


鰻重を食べるのは久しぶりで、自然とにやけた。


「相変わらずキモい奴だな。」


う、酷いよ。


「又、泣いて逃げるのか?」


「…………………………」


どうして、又こんな思いをしなけりゃいけないの。


斗真なんて嫌いだ。


もう絶対無視してやる。


鰻重に負けてしまった、自分が恥ずかしい。


情けない。


でも、大好物の鰻重だよ。


さっさと食べて戻ろう。






























< 17 / 308 >

この作品をシェア

pagetop