犬と猫…ときどき、君
「城戸先生ー!!」
「あー?」
「ごめんっ! ちょっと……手伝ってぇー!!」
「……すみません、小林さん。ちょっとだけ待っていてもらっていいんですか?」
診察室で診察をしていた俺は、胡桃のその声を聞いてクスクスと笑うオーナーに一声かけて、ゆっくりと席を立った。
一応オーナーの前では“先生”を付けて呼び合ってはいるけど。
「手伝ってぇー!!」とかデカイ声で言ってる時点で、もうそんなの必要ないんじゃないかと思うのは……俺だけか?
「何だよ」
声が聞こえたレントゲン室を覗き込むと、そこには息を切らせた胡桃とサチちゃんと……ドデカイ、セントバーナード。
「ゴメン城戸……無理。手伝って……」
息切れしながら俺を見上げる胡桃のその視線に笑いを漏らしながら、サチちゃんの防護服を受け取った。
「サチちゃん、悪いんだけど第二診察室の小林マルちゃんにレーザー当てといてもらえる?」
「はーい! いつものトコですよね?」
「うん。L7からS1までね。一応カルテに場所書いてあるから、確認して」
俺の言葉に何度か頷いて、彼女はパタパタとレントゲン室を後にした。
「で? どこ撮んの?」
「胸部撮りたいんだけど、仰向けを超拒絶されてる」
恨めしげに眉間に皺を寄せる胡桃は、少し膨れたあと、
「チャコちゃーん、ちょっとだけだから頑張って!」
自分の顔よりも大きなその犬の顔を覗き込み、頭をワシワシと撫で回す。
「――っぷ!! ちょっ、チャコちゃん!! わかったからっ!! 城戸、助けてっ!!」
「……ったく、お前は何してんだよ」
頭を撫でてくれたお返しとばかりに、胡桃の顔をベロベロと舐め回す“チャコちゃん”を、笑いながら胡桃から引き離した。