犬と猫…ときどき、君

「はぁ……。酸素不足で倒れそう」

「こんなんで倒れられちゃ困るんだけど。さっさと撮るぞ」


未だに笑が治まらない俺を一瞬睨んだ胡桃は、レントゲン台の上に“チャコちゃん”を乗せ、位置決めを始めると、スッとその表情を変えた。


診察中邪魔にならないようにと、一つにまとめられたその髪が、ハラリと肩から滑り落ちる。


小さな四角い光だけが点灯する、暗いレントゲン室。

上から当たる光で、その頬に映された長い睫毛の影。


「……」

あぁ、やっぱり綺麗だな。


もう触れる事さえ出来ない、その瞼に、頬に、唇に……瞳を奪われるのはいつもの事。

軋む胸に、小さく顔を顰めてしまう。


だけど胡桃は気付かない。

いや、気付いちゃいけないんだ。

こんな想いを、いつまでも抱いている俺に気付いてはいけない。


だから、これでいい。


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