犬と猫…ときどき、君

「ねぇ、城戸ー。大丈夫?」

「……」

ボーっとしていたところに、突然かけられた胡桃の言葉で、ハッとしながら視線を上げた。

ゆっくりと上げられた胡桃の視線と、俺の視線がぶつかる。


たった、それだけの事。


それなのに、俺の心臓はバカ正直にその鼓動を速めるんだ。


「城戸、全然休んでないでしょ? 遅番の日もいつも早く来てくれるし」

「あー、別に平気。それはお前だって同じだろ?」

「でも、たまには休んであげないと、松元さんだって――」

「ホント、平気だから」

「……」

胡桃の言葉を遮って、強い言葉が口をついて出てしまった。


俺を真っ直ぐ見つめていたその瞳が、一瞬揺らいで、瞬きと同時に、俯きがちに逸らされる。


「……悪い」

「ううん。私こそ関係ないのに、ごめん」

胡桃。

頼むから、そんな事考えないで欲しい。

言わないで欲しい。


そんな顔……しないで欲しい。


「今度三連休もらったし、ホント平気だから」

「そっか」

俺の言葉に少し困ったように笑って、すぐに口を閉ざしてしまった胡桃のその表情に胸がしめつけられる。


なぁ、胡桃?

胡桃は今、何を思ってる?

俺の言葉を聞いて、どう思う?


松元サンと過ごす俺を想像して、少しはショックだって……そう思う?


気付かれてはいけない、俺の胡桃への気持ち。


――それなのに。

頭の中に浮かぶのは、あきらめが悪くて、恥ずかしくなるくらい女々しい、矛盾した想いばかりなんだ。


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