犬と猫…ときどき、君

あと解決しないといけないのは、今野の事。

「んー……」

何度目かもわからない唸り声を上げながら、カルテを覗いて項垂れる。


昨日家に帰ってから、悩みに悩んで送ったメールが、【無理かもしんねぇけど、さっきの忘れて。悪かった】なんてどうしようもないメール。


だってよー……言い訳しても仕方ねぇし。

そう思って、半ば開き直り気味に送ったメールへの今野の返信は――。

【忘れていいのか?】

そんな、俺の心を読み切ったメールだった。


忘れていい、はず。

電気も点けていない真っ暗な部屋で、悩んで悩んで……。

気が付いたら、眠っていたアホな俺。


ソファーの上で眠ってしまった俺は、朝、痛む体をゆっくり起こし、いつの間にか床に落としていた携帯を拾い上げた。


働き始めて、特に今の病院に移ってからはだいぶマシだけど、やっぱり朝は得意じゃない。

ボーっとする頭で、ぼんやりと携帯を眺め、そこでやっと今野からのメールを思い出した。


しまった……。

ゆっくりとそれを開けば、“新着メールあり”の文字が画面に表示されていて、胸がドクンと音を立てる。


「朝っぱらからキツイな」

大きく息を吐き出し、それを開くと案の定、今野からの二通目のメールだった。


【忘れる努力はしてみるよ。本当はすっげぇ気になるけど】


――朝から、頭がズキズキ痛む。

俺は痛む頭を押さえながら、ただ一言だけ【悪い。】と返信して、出かける準備を始めた。

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