犬と猫…ときどき、君
「しかも、最低なのはどっちよ」
昨日、私にキスをした春希。
その春希に「最低」なんて言葉を吐き捨てた私だったけど。
――本当に最低なのは、誰?
私が“春希”なんて呼んだから。
「――……っ」
止まっていた時計の針を動かそうとしたのは、私だ。
あんな風に一方的に、松元さんの名前を引き合いに出して、利用して、そうする事で、自分に言い聞かせようとしていただけなんだ。
これ以上、春希に気持ちが向かないように、自分勝手に気持ちをぶつけて、春希も松元さんも利用して、自分に言い聞かせたかっただけ。
「最低なのは……私だよ」
しゃがみ込んだまま空を見上げれば、眩暈がするくらい星が綺麗で。
「はぁ……っ」
吐き出した呼吸も握りしめた指先も、胸も体も、瞳に映る星まで震えて、止まらない。
「ふっ……」
上手な泣き方なんて、分からない。
上手な甘え方だって、知らない。
どうしたらこの気持ちが楽になるのかさえ分からない私は、こんなにも星が綺麗なその場所で、下を向いたままバカみたいに泣き続けることしか出来ない。