犬と猫…ときどき、君
次の日、目が覚めると携帯がピカピカと光っていて、それは篠崎君から届いていたメールを知らせるものだった。
【昨日は大丈夫だった? 俺スゲー余計な事いっぱい言っちゃったんじゃないかと思って……。色々考え込ませてたらごめん】
篠崎君らしいメールに、心が少しだけ軽くなる。
【大丈夫だよ。私こそ、色々ごめんね】
そうメールを返信して、シャワーを浴びた私は、いつものように服を着て、お化粧をして、一人ぼっちの病院に向かう。
通勤途中、花の香りが混ざり始めた空気に、胸が少しだけ痛くなった。
――春希はいつ日本を発つのだろう。
わざと聞かないようにしたのに、それもやっぱり気になってしまう。
春希は本当に留学してしまうのかな?
そもそも、留学がしたいのかな?
もしもそれが本心ではなくて、篠崎君が言っていた通り“逃げ”なのだとしたら……。
私に出来ることって、何もないのかな。
昨日の夜から、それは考えていた事。
春希は辞める時に、リースの契約も閉院と同時に切れると言っていた。
もしも春希がここに残りたいと思っていたとしても、機械がないと診療なんて出来るはずがない。
「ん〜……」
絶対に足りるはずなんかないのに、自分の貯金の額を思い出してみたりして。
そしてまた春希の事を考えている自分にハッとして、
「昨日反省したばっかりなのに……」
そんな言葉を口にする。