彼氏の余命を知ってる彼女。


「一ヶ月…」


「そうだ。人間からすると思い出やらを作るのにそこまで短くはない期間だろう」


「…短いよ…、短過ぎるよ…」


言葉を失って放心している私の目の前にヒカルの時計ではない他の時計が目の前を通っていった。


その時計の針は11時59分を指している。


…あれ?ヒカルの時計は12時になるまで後3分だった。針が動くのに、私が知っている時計と違うのかな…。


「あぁ、この時計は、命の灯火が消える約一年八ヶ月前に作られる。一人ひとり針が動く日程は違うが、このスギヤヒカルの時計は、一分を日にちに例えると十日間だ」


私の心の声が口から出てしまっていたのか、死神は私の考えていたことの答えを、目の前にある時計を見ながら呟いた。


「…一分が10日間なら、5月は31日までありますよ…。そういう場合はどうするんですか…」


「時計は必ずその針の動く日程に合わせる。だからこの時計ではその三十一日の一は加算されない。スギヤヒカルの寿命は五月十日。それは変わらない」


キッパリそう死神は言い放った。

    

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