彼氏の余命を知ってる彼女。
「入室者は名前を書いてください」
入口の横に居た図書委員の人に無愛想にそう言われ、しぶしぶ渡された入室者カードと鉛筆を受け取る。
…もうちょっと愛想良くても…。
名前の字を適当に書き、箱のカード入れにいれようと勢いよく箱にカードを入れると、その反動で箱が地面に落ちてしまった。
その中に入っていたカードも床に散らばる。
「…」
…最悪…。
ふぅ、とため息をつき、手早くカードを集めた。
「あ…」
カードを集めていると、見覚えのある字が書かれているカードを見つけた。
それは紛れもなくヒカルの字──。案の定、入室者の横の名前記入欄には“杉谷ヒカル”の文字。