≡ヴァニティケース≡

 鎖骨と鎖骨の間にうっすらと光る汗。その汗から立った女の匂いが鼻孔を満たす。左手はそのままに、右手を乳房から腹部へと滑らせる興奮した女が部屋の真ん中に居た。


 そこまでいくと、美鈴はもう立ってはいられなかった。座布団の上に膝をついて、そのまま前に倒れ込んでしまう。両手がふさがっている今は、膝と額の三点で体を支えるしかない。鏡には酷く淫靡な女の姿が写っていることだろう。自分の目で確認するのは恥ずかしい。


「こんなのは……ダメ」


 妄想の中の男が美鈴の体を責め、苛む。無遠慮に肌を伝う指が艶やかな茂みに到達した。


「いやっ」


 途端、小さく悲鳴をあげたのは誰だろう。目を閉じて作った暗闇に浸る美鈴には、周囲にある全てのものが判然としない。鈍い意識の中で鋭敏になっていく感覚も、ただ快楽だけが蒸留され、その濃度を増して抽出されているように感じた。



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