≡ヴァニティケース≡

「お一人はんですか、あちらのカウンターでよろしおすか?」


「は、はい」


 心配は杞憂に終わり、どうやら席は空いていたようだ。なのに美鈴の振る舞いは奇妙なほどぎこちなかった。最近は外食を控えていたせいか、どうも飲食店の雰囲気に呑まれてしまいそうになっている。


 だが案内された席に座り、これは一枚板だろうか……光沢のある檜のカウンターにアミューズが運ばれてくると、美鈴はひとり息を飲んだ。


「綺麗な盛り付け。美味しそう!」


 アペリティフのカンパリオレンジに少しだけ唇をつけ、花びらのように盛り付けてあった料理を口に運んだ。


「んっ! これ、湯葉だ。さすがフレンチ懐石ね。中に入っているベーコンとも良く合うしっ」



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