≡ヴァニティケース≡
以前のように毎日とはいかなくとも、たまには贅沢したい時だって有る。早く資格を取得して、美味しいお店に気兼ねなく行けるようになりたかった。自らを鼓舞するにはちょうどいい目標だ。
「最高の気分ね」
ランチコースはスープと魚料理からソルベへと続き、やがてサラダとセットになった肉料理のプレートを満喫した後、これもお洒落に飾られたデセルが供された。
「うう〜ん! これも美味しそう」
休憩時間をたっぷりと使ったランチも終わりに近づいている。だが、美鈴が大きく口を開けてスプーンにかぶり付こうとした、その時だった。
「えっ、何?」
不意に背後から何者かの視線を感じた。それは慣れっこになっている、美鈴のルックスを誉めそやす眼差しとは明らかに違っている。気配を察知した途端、戦慄が一筋の汗となって背中を伝っていく類いのものだ。