≡ヴァニティケース≡
それからというもの、美鈴は必要以上に周囲を気にするようになった。あれ以降、覗き見やあからさまな付きまといには遭遇しなくなったが、ネットリとまとわり付くような視線は依然強く感じられていたからだ。ただの気のせいではないことは、最早疑いようもなかった。
現実的に見て、ストーキング行為そのものに依る被害とは、どれ程のものだろう。端的に言ってしまえば実害はないのだが、得体の知れない人物の存在を感じて、それに恐怖しない者は居ない。映画や小説中のそれと違い、この恐怖は直接命にも関わる場合が有るからだ。望まざる恐怖心と困惑を強制的に与えられることが、ストーキング行為に依る被害だとも言える。
「どうしよう……警察に相談した方がいいのかしら」