≡ヴァニティケース≡
「探偵さんにお願い出来るお金なんか無いし、ボディーガードを雇うなんて余計無理だし……」
とは言え、真っ暗にした部屋で冷え切ったコンビニ弁当を食べていた美鈴は、このままで本当にいいのか考えてしまう。これでは何のために京都に移り住んだのかも解らない。希望に満ちていた筈の新生活を、悪意が横溢オウイツした無頼漢に邪魔されていい訳がない。
「ああっ! いけない、忘れてた!」
そこで美鈴は唐突に、牧田から言い遣っていた用事を思い出した。今日は帰り際に事務所で使うカッターの刃を買っておくよう彼から指示されていたのだ。退勤してすぐに寄った文具店では品切れだった為、自宅近くの店で買おうと思ったのをそのまま失念していた自分を呪う。