≡ヴァニティケース≡
それから暫くは幸せな日々が続いていた……ように思われた。
隆二と美鈴は驚く程に身体の相性が良かった。彼に抱かれる度、今まで出会ってきた男がちっぽけに感じられた美鈴の心は、日に日に酔いしれ、味わったことのない快感にいつしか骨抜きにされていった。
「もう、隆二ってばすぐ押し倒すんだから」
「お前が抵抗しないから悪いのさ。本当は俺に抱かれたいんだろ?」
普段は単純で粗野極まりないが、男はこういう場面でだけ小賢しい生き物に変わる。囁かれながら耳を甘咬みされると、女はそれだけで膝から力が抜けるものだと、本能で知っているのだ。
「解ってる癖に、意地悪ね」
気付けば会社にも行かなくなり、隆二に抱かれることだけを待つ毎日になっていた。
「愛してるよ美鈴、お前は誰よりも、何よりも綺麗だ。花より、月より、星よりも、そして……」
火照った身体を優しく伝う隆二の指と、耳元で囁かれる甘い言葉に包まれながら、美鈴は今日も眠りに落ちる。
彼のしなやかな指に、熟れた唇に、熱く柔らかい舌に心身を囚われて逃げられない。そんな日々に自ら溺れていった。