≡ヴァニティケース≡
「お疲れさんどした」
「ほな、うちはこれで」
「大城はん、さいなら」
「お疲れ様でした」
なんの進展もなく一日が終わってしまったのが悔やまれた。やることはあらかた午前中に済ませていたので、美鈴は定時で仕事を終えられた。だが、これでは単に段取りの良かった一日としか評価出来ない。
ため息混じりに帰り仕度をする美鈴へ、一番古株のパート、宇佐美が声をかけてきた。
「なぁ、大城はん。今日はもう終いますの? このあと、時間取れはります?」
彼女はこれまでにも解らないことを親切に教えてくれるなど、新顔の美鈴にも良くしてくれていた女性だ。急にどうしたのだろう。
「たまには一緒にお茶でもせえへん?」
「でも宇佐美さん、お家の方はよろしいんですか?」