≡ヴァニティケース≡
美鈴はゆさゆさと腰回りの肉を揺すって歩く宇佐美について病院を出た。駅の近く、カフェタイムが終わって閑散とする喫茶店に入り、まずは当たり障りのない話題から会話を始める。家庭の話、家人の話。不満、愚痴。女が茶を前にして話す内容は世界共通だ。導かなくとも、いずれは仕事の話に言及する。
「せやけど……蒔田はんもしょっちゅうえぐい言い方をしはりますなぁ。でもあんなん言うてはりますけど、あの人かて最近中途で取られはったんですえ」
「ええっ? あのオヤジ……いや蒔田さんがですか?」
美鈴は宇佐美の言葉に耳を疑った。あの蒔田が最近になって入社したとは、とても信じられない。
「ふふふ、オヤジでよろしいがな。誰ぞ聞いてはる訳でもなし。そうどすな、あの人が来たのは大城はんが見えられるひと月ほど前でしたやろか」