≡ヴァニティケース≡
そもそも美鈴は、その非の打ち所のない涼しげな美貌をフルに活用して、生徒と保護者の信頼をいとも簡単に勝ち得てきた優秀な営業だった。一科目50万は下らない高価な教材を難なく売り捌いてきた。当然、風俗嬢にも負けない程に稼いでいたので、暫くは働かなくとも生活出来る貯蓄は十二分に有る筈だった。
しかし、始めの内こそ美鈴と一時も離れずに行動していた隆二はしかし、次第に自分一人の時間を要求するようになっていく。
「昔のハスラー仲間と飲みに行くんだけど、財布がさ」
たびたび美鈴から金を無心するようになり、それがやがてエスカレートする。一度に渡す金額も、気付けば5万を超えていた。
「余り遅くならないでね」
「男の付き合いってやつだ。ごちゃごちゃ言うな」
「……うん。解った……」
まだ毎日のように身体を求められていた美鈴は、愚かにも自分は愛されているのだと信じ、全てを隆二の為に捧げていた。
束の間……と、そう表現するのが果たして適切だろうか。暫くして貯金が底を尽き始め、仕事をするように美鈴が言い出した途端、隆二の態度は一変した。