≡ヴァニティケース≡


「中島、どうだ? 電波は途切れてないか?」


「大丈夫です。問題なく追従出来てます」


 10分後、塚田達は二台の車に分かれて黒いワンボックスカーの行方を追っていた。


 相手はフロントガラスが割れたワンボックス、こちらは二台ともがスポーツタイプのセダンだ。駐車場までの移動時間で遅れこそ取ったが、そもそも車の性能が違う。拉致するのに便利なスライドドアは、しかし逃走に向いた車には装備されていない。塚田達はみるみるうちに相手との間を詰めつつあった。


「同じ町内に入りました。あと少しだと思います」


 車は街道を走って住宅街に抜けた。順調といってもいいほどの早さだ。このまま走れば、もうすぐ敵の姿を捉えられる。


「よし、何が何でも食らい付け。エンジンが焼き付いても構わねぇから、ブン回せ!」



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