≡ヴァニティケース≡
「奴らはここに居る。俺と中島は反対側に回り込んで北側から、郷田は東から、鎌田は西から近付くんだ。いいか、突入はきっかり3分後だ。残りの二人は車で待機。奴らが逃げてきたら退路を建て。携帯は持ってるな」
「持ってます」「うぃっす」「解りました」
敵に気取られないよう、男達は体勢を低く取りながら注意深く目標に近付いていった。
「相手は3、4人の筈だから、俺達なら楽勝ですね」
「シッ! 声が大きいぞ、そして油断はするな。相手は飛び道具を持ってるかも知れねぇんだ」
「す、すいません」
中島が肩を竦めて恐縮している。目標のワンボックス車は、住宅街に佇む設計事務所の前に停められていた。二階建ての事務所はこんにゃくを横置きしたような外観で、ところどころ壁にひびが入っている。色もこんにゃくそのものだった。