≡ヴァニティケース≡

 いずれにせよ、もうどうにもならなかったのだ。美鈴の言葉が、仮に隆二を啓蒙する為に発せられたものだったとしても、その声が彼の胸に響く可能性はなかったのだろう。


 案の定、預金通帳を見せられた隆二は「フン」と鼻で笑うと、「昔から言うだろ。金の切れ目が縁の切れ目ってな」


 そんな捨て台詞を吐いたか吐かなかったか……だが結局、その日から美鈴は二度と隆二に会っていない。


「……はぁ。結局、いいように遊ばれただけね」


 溜め息と共にそう溢すと美鈴は、まだ隆二の残した痕跡がそこここに残る部屋を見渡した。



< 22 / 335 >

この作品をシェア

pagetop