≡ヴァニティケース≡
────身体が動かない。く、口も塞がれてる!────
美鈴は瞬時に状況を理解した。気絶しているうちに拘束衣を着せられ、ベッドに縛り付けられたらしい。更に拘束衣も簡単な代物ではない。アンソニー・ホプキンスがハンニバル・レクター役で着ていたあれだ。見ようによっては、気ままなミノ虫にも蜘蛛に捕獲された憐れな獲物にも見える。まさか自分がこんなものを着せられるとは思ってもみなかった。身動き出来ない身体が熱を帯び、額に、首に、脇に、全身にじっとりと汗が滲んでいる。背中に貼りついた部分だけが妙に冷たかった。
────助けて! 誰か! 私は此処よ!────
恐怖のあまり理性が崩壊しそうだという重大な問題こそあれ、身体に目立った痛みは無い。
叫んでも声が出せないという本末を揺るがす障壁こそあれ、言葉は失っていない。ここに美鈴の味方は居ないのだろうか。