≡ヴァニティケース≡

─────ああっ、もう少しで出てきそう─────


 美鈴は混沌とした意識の中で女の顔を探している。思考の迷路とは長久の道程を歩く、しかし進まない一歩一歩に他ならない。焦燥に浮き足立った精神が悲鳴と共に出口を目指す無間地獄だ。


 ここから出るには答えを見付けるしかない。それが出来なければ、誰もが受け入れられる弁明を考えてから避難するのがルールだ。


 ふと美鈴の頭の中で、三線がポツリポツリと鳴り出した。


~♪面影ぇぬでんし

 たたなうち呉りば

 サーサーサー

 ションガネー

 スリションガネー♪~


 琉球民謡の「遊びションガネー」その幼い頃の記憶に有った歌が、美鈴の脳裏に蘇える。



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