≡ヴァニティケース≡

「求人雑誌も駄目、広告も駄目。ついに通い出したハローワークでも、すっかりお得意さんになるなんて」


 数ヶ月間に渡って仕事が決まらずにいた美鈴はここ数日、毎日のようにハローワークのパソコンで求人案内を閲覧していた。その際、前職と同業種の教材販売や、他業種でもアポイントセールス等の訪問販売を敢えて除外していたことは言うまでもない。


詐欺まがいの方法で商品を売り付けることに、美鈴はいい加減嫌気が差していたのだ。


「でも時給千円ぽっちで働くなんて、貴重な人生をドブに捨てるようなものだし……」


 今までの美鈴の生活は、実績に基づく潤沢な報酬に支えられていた。そして一度上がってしまった生活のレベルは、おいそれと下げられるものではない。数有るお手軽な働き口には食指が動かなかった為、結果的にいつまでも就職先を見付けられないでいた。



< 27 / 335 >

この作品をシェア

pagetop