≡ヴァニティケース≡
「求人雑誌も駄目、広告も駄目。ついに通い出したハローワークでも、すっかりお得意さんになるなんて」
数ヶ月間に渡って仕事が決まらずにいた美鈴はここ数日、毎日のようにハローワークのパソコンで求人案内を閲覧していた。その際、前職と同業種の教材販売や、他業種でもアポイントセールス等の訪問販売を敢えて除外していたことは言うまでもない。
詐欺まがいの方法で商品を売り付けることに、美鈴はいい加減嫌気が差していたのだ。
「でも時給千円ぽっちで働くなんて、貴重な人生をドブに捨てるようなものだし……」
今までの美鈴の生活は、実績に基づく潤沢な報酬に支えられていた。そして一度上がってしまった生活のレベルは、おいそれと下げられるものではない。数有るお手軽な働き口には食指が動かなかった為、結果的にいつまでも就職先を見付けられないでいた。